経皮吸収型 (塗る・貼る):
因みに、ミク〇ゲンパスタなど日本で販売しているテストステロン入り塗り薬は、1%メチルテストステロン(主に経口用に使われるもの)のものが多い模様。純粋なテストステロンである以下の医薬品とは別物と考えてください。
ブランドネーム
Androderm® (ワトソン)
Testoderm® (アルザ)
概要
Androderm®は1995年にFDAに認可された初の経皮吸収型テストステロン。禁煙用ニコチンパッチと同じ仕組み。まあサロンパスを想像してくれ。陰嚢用と非陰嚢用があり、陰嚢からは吸収が良いので含有量が低い。
使用量・頻度
24時間有効で、毎日張り替える 。個人によって使用枚数は異なるが、1日1〜2枚(2.5〜5.0mg吸収)使うらしい。脂肪の少ない部位に貼ると吸収が良いとか。
一ヶ月当たりの費用
使用量によるが、 約 $100 〜$ 200 と高く、保険が利かないと難しい。ジェネリックもまだ。
長所
ジェルやクリームのように女性や子供などに触れて「汚染」してしまう可能性が低い。
短所
肌が弱い人は、かぶれることがある。毛深い人は、剥がす際に毛が引っ張られて痛い。
薬局製剤・ジェネリックが無く、高価。
ブランドネーム
AndroGel® (ソルベイ)
Axiron® (イーライリリー)
Testim® (Auxilium)
Testogel® (シェーリング)
グローミン (大東) *下記参照
トノス (大東) *下記参照
プリズマホルモン軟膏 (原沢) *下記参照
概要
AndroGel®は2000年に認可された、初のジェルタイプのT。濃度は1%のみ。アルコールベースの透明のジェルが1回分(5g)ずつ個包してあるのと、5gずつ出るポンプ付きのボトル入りのがある。2006年から、ジェネリックの製造も許可されているらしい。
Testim®は2002年に認可されたクリームタイプのT。これも1%のみで、チューブ入り。臭いがキツく、塗り心地がベタベタしていると不評がある。
Axiron® は初&唯一のワキ塗りタイプ。
日本で市販しているテストステロンクリーム・グローミン等も、ペトロレータム基材の軟膏なのでベタベタ。単独使用でFTMトランジションは今のところ無理があるかも。→もっと詳しくは下記参照
使用量・頻度
AndroGel®の場合:毎日風呂上がりに1〜2包分(5~10g)を、上腕や肩、腹部等に塗布。薬局製剤ジェルの場合は濃度を数倍高く作って貰えるので(5〜10%+)、大体1日1〜2回、1gほどで済む。
腕や肩、腹に塗る場合、吸収率は10%ほどらしい。
AndroGel Prescriibing Information - FDA, p.17
一ヶ月当たりの費用
使用量によるが、ブランドものは $200以上。
薬局製剤だと薬局や使用量によって差があるが大体$20〜$60前後。
長所
製剤可能なので、濃度の高いものを作ってもらうことができるし、比較的安く済ませることもできる。
短所
塗布部が女性や子供に触れないように注意しなければならない。
ブランド品は濃度が低い(1〜1.62%)ため、一度に使う分量が多く広範囲に塗らなければならないので不便。
「グローミン」「トノス」「プリズマホルモン軟膏」など、日本国内で市販されているテストステロン1%含有軟膏に関して幾つかの質問をお寄せ戴いたので、分かる範囲でちょっとだけ説明。
市販品とは言え本物の性ホルモンで、FTMが使う場合は適応外なので、使用の際は必ず医師による管理下で行ってください。素人判断での使用はオススメできません。
ということを前提に定められているため、FTMが満足な男性化を期待して使用する場合(特に内摘前)は、恐らく使用量の大幅な調整が必要と思われる。また、陰嚢からの吸収率が高いことは確からしいが、どうやら実際は100%には程遠く、普通の皮膚で約10%[1]と言われているので「陰嚢の吸収率は腕の42倍」ってのは考えにくい(そもそも1967年の古い文献でテストステロンでもない)。Testoderm開発の製薬会社Alza(当時)によると、陰嚢の吸収率はほかの部位の5倍らしいので[2]、だとすると局所でもせいぜい50%程度かと。因みにTestoderm(陰嚢パッチ)は吸収率約20%を前提としていた模様。
管理人自身の使用量を参考として挙げると、8%を1日1g = 80mgだが、腕や腹に塗るので吸収率は約10%、つまり1日当たり8mgとなる。但し、4年間続けても髭が殆ど無く、油断すると生〇も始まるので、これはジェルを使っている内摘前FTMの平均的〜低めの用量と思われる(実際、一度は主治医から量を倍にしろと言われたし。効果にはそこそこ満足してたし副作用がイヤだったので拒否したのだが)。
「グローミン」「トノス」「プリズマホルモン軟膏」のテストステロン含有量は僅か1%。局所(陰嚢に当たる部分なので、大陰唇やその付近かと)に塗ってほぼ100%吸収されるものと仮定して、1日2回チューブから2cmでテストステロン吸収量は1日当たり6mgということになっている。
更に、これを他の製品同様に腕や腹に塗るとしたら、吸収率は前述の通りおよそ1割。となると、管理人と同等の使用量でも1日丸1本近く使用しなければならないことになり、現時点で安くても1本(10g)3000円以上するこの商品を使うのは実用的とは言えないと思うよ。
以上のポイントを分かりやすく表にするとこんな感じ(吸収量8mg/日、全額自費を想定):
処方薬(管理人使用) | 市販薬(グローミン等) | ||
濃度 | 8% | 1% | |
費用/g | ¥70 | ¥320 〜 | |
塗布部位 | 上腕・腹部 | 陰部 | |
吸収率 | 〜 10% | 〜 50%? | |
使用量/日 | 1g | 8g | 1.6g以上 |
費用/日 | ¥70 | ¥2,560 〜 | ¥1,280 〜 |
費用/月 | ¥2,000 | ¥76,800 〜 | ¥38,400 〜 |
というわけで、「グローミン」・「トノス」・「プリズマホルモン軟膏」をトランジションに利用するには、少なくとも
という必要があるんじゃないかと思われる。局所に塗ることでどれだけ吸収率が改善されるかによって、効果の程と実用性が決まるわけだね(あとは陰部がベタベタするのが気にならなければ、か)。もしかしたら、内摘後のメンテナンスには有用かも知れないが、直接的な副作用や性ホルモン不足による骨粗鬆症の危険性を考慮すると専門家によるモニターは必須。
参考:[1] Testosterone Replacement Therapy for Male Hypogonadism: Part III. Pharmacologic and Clinical Profiles, Monitoring, Safety Issues, and Potential Future Agents. Sefte, A., Int J Impot Res. 2007;19(1):2-24.
[2] Compounded Percutaneous Testosterone Gel: Use And Effects in Hypogonadal Men. Cutter,C. B., J Am Board Fam Med. 2001;14(1)
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