美容的下肢骨延長術(身長を伸ばす手術)
多くのFTMにとって低身長はよくある悩みだけど、近年「何が何でも身長を伸ばしたい!」と切羽詰まっている成人男性の中に、「下肢延長術」という手術を受ける人たちがいるらしい。 これ、1997年のSF映画「ガタカ」で、イーサン・ホークがジュード・ロウの身長に合わせるために受ける手術である。この映画を観た時はあくまで架空の手術法だと思って「よく考えたなあ」と感心してたんだが、実は1951年にロシアの医師Gavril Abramovich Ilizarovによって開発された「イリザロフ法」と呼ばれる実在の骨延長術であるらしい。
骨延長は本来、外傷による骨変形、又は先天性の骨成長障害などに対して用いられる手術。障害もなく健康体の人間が身長を伸ばすのが目的の場合は、言うまでもなく美容整形の一種なわけで、医療保険が適用されるはずもなく、 手術費用だけでアメリカの場合おおよそ550〜900万円、ヨーロッパでは約280万円かかる(エジプトまで行けば約110万円で受けられるらしい。いずれも$1=¥110換算)。が、この手術によって、最終的には最大で約7cmかそれ以上身長を伸ばすことが出来るらしい(但し2インチ(約5cm)以上から合併症・後遺症のリスクも高まるとのこと)。
また、近年では、イリザロフ法よりもintramedullary skeletal kinetic distractor (ISKD) などの骨内部に装置を埋め込む(髄内釘)術式が感染症リスクの低さなどから主流になってきている模様。
このページでは、「骨延長術」の代表格「イリザロフ法(The Ilizarov Method)」を分かる範囲で解説。
I. 手術前
身長を伸ばす目的で行われる骨延長術を受けるには、少なくともアメリカの場合、厳しいスクリーニングが行われる。膨大な費用と、苦痛、長期間に渡る日常生活の不自由など、かなりのの犠牲を要する極端な手術なだけに、希望する患者の精神鑑定も必須で、最終的に手術まで達する希望者はおよそ一割と言われている。そしてアメリカの場合、基本的に5'5"(約165cm)以上の男性には手術をしないポリシーがあるらしい(女性では155cm以上。日本人だったらかなりの割合の人が余裕でクリアする身長だけどね)。
II. 手術
スクリーニングをパスした人は、その人専用の金属製の固定器(Ilizarov external fixatorというらしい)の製作のために、足のレントゲン写真を撮られる。
一般的な骨延長術は、主に口腔外科や整形外科で何らかの疾患、骨折、生まれつきの奇形などの治療・矯正手術として使われる術式らしいが、身長を伸ばすのが目的の場合は、要するに両足の頸部にノコギリを差し込む1センチちょっとの切開をして、骨(両足で計4本)を切り離し、ピンを骨に通し金属製のフレームに固定して、切断した骨の間隔を徐々に開き、その隙間に新しい骨が出来るのを待つ、ということらしい。
この手術自体には2時間半、入院は2〜3日と、手術としては比較的ラクなほうなのだが、問題はこの後・・・。
III. 手術後:Lengthening / Distraction(骨延長)& Strengthening(骨強化)
手術から約一週間後から2〜3ヶ月に渡り、骨延長が行われる(自分でやるんだけど)。1日4回6時間毎に、ピン(10+)をほんの少しずつ回転させて繋がっているワイヤーを締め、徐々に切断された骨の間隔を1日1mmほど開いてゆく。 この期間の痛みは強力な麻酔薬を服用しつづけても耐え難いほど尋常ではないらしい。この間に1日1〜2時間の物理療法も続ける。
骨延長期間後3ヶ月〜6ヶ月ほどの骨強化期間も、引き続きフレームは着用。フレーム着用中は骨折部に負荷をかけてはいけないので、勿論歩けないし、麻酔薬を常に服用していることもあり仕事も不可能。風呂やシャワーもろくに浴びられない。フレームが外れた後も約3ヶ月は骨がまだ弱いので車椅子での生活を強いられることになる。その間自由に外に出歩けないので買い物は勿論、排泄などの日常生活もままならないので 、ほぼつきっきりの介護が必要となる。 骨が体重を支えられるくらいまで強化されたら、フレームとピンを外す手術が行われ、患者は車椅子無しで歩き回れるようになるが、当分の間、松葉杖やギブスが必要とか。
最終的には計1年間前後は不自由な生活となり、仕事もできないので、その間は収入がゼロでも生活できるような経済力も要されるわけである。
合併症・感染症の発生率は25%と極めて高い。 一番よくあるのがピン挿入部からの感染症で、発見が遅れると足の組織から骨へと広がり、骨髄炎による骨の壊死や間接の硬化につながる
12患者に1人の割合で、形成された骨が満足に強化されずひとりでに砕けることがある
手術前の運動能力まで回復することはない
両足の長さが違ってしまうことがある
固定器が正確に一直線になっていないと、足が捩れてついてしまう・・・などなど。
というわけで、かなりのリスクと費用を負うことになるが、この手術を受ければある程度身長は伸びるらしい。膝下のみで最大7cm程度伸びるらしいが、そこまで靭帯や筋肉が持たないという場合も多い。更に膝上にも同じ手術を施すことも出来るが、更なる費用や労力はもとより、そこまでやるともともと短肢症でもない限りかなり不釣合いで不恰好になってしまうので、あまりおすすめできないらしい。
この手術に関する専門家の見方はまだかなりの論争が繰り広げられており、賛成派と反対派の真っ二つに分かれているようである。賛成派は、手術の有効性と患者の生活クオリティーの向上を謳い、反対派は手術の危険性と道徳的疑問を強調している。低身長者に対する社会的なプレッシャーは、特に中国ではかなり深刻な問題と化しているようである。
因みに、これをやったFTMってのは聞いたことが無い。まあFTMの場合は身長よりも優先される問題が山積みなわけだし、身長を手術でどーにかしようなどと真剣に考えられる余裕が出てくるとこまで辿り着くまでに、既に莫大な費用と時間と労力を使ってしまってるし、その時点ではもう自分のカラダ以外のことにもっと集中したい、と思うもんなんじゃないでしょうかね。
それに実際、身長が平均よりも遥かに低い成人男性で、この手術の存在を知り、且つそれを受けるだけの経済力と度胸があっても、敢えて受けない人たちが殆どなわけだから、果たしてそこまでして背が高くなりたいか・・・と訊かれるとビミョーじゃないかと。となると真剣にこういう手術を考えている人の中には「身長が低いから幸せになれない」とか「身長が低い所為で人生真っ暗だ」とか、かなり思いつめている人も少なくなさそうで、だからこそ厳しいスクリーニングが義務付けられているところが多いんでしょうね。
最終更新日:2014年3月2日
参考:
Cosmetic
Leg Lengthening @ Short Persons Support
All To Be Tall by Joe Kita - Men's Health Magazine, Feb.
2004
Ilizarov.com
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