ホルモンとは、特定の臓器(精巣、卵巣、副腎皮質、脳下垂体、etc.)で生産され血液中に分泌され、体中を巡って特定の組織の特定の受容体と合体して、その細胞に化学的変化をもたらす化学物質。 分泌腺から導管を使わず血液や体液に直接リリースされ各臓器に伝達されるシステムを「内分泌」と呼び、ホルモンは「内分泌物」と呼ばれる。 因みにいわゆる『環境ホルモン』というのはこの内分泌システムに作用し混乱させるもので、別名「内分泌撹乱化学物質」。
ホルモンの中でも、テストステロンを含む性ホルモン(生殖機能に関わるホルモン)は以下のように分類される:
ホルモン(内分泌物) hormones
の一種の・・・
ステロイド steroids
の一種の・・・
性ホルモン sex steroids 、は3種類:
@ アンドロゲン(男性ホルモン) androgens
ー テストステロン(テストステロン) testosterone
ー DHT(ジヒドロテストステロン) dihydrotestosterone
ー DHEA(デヒドロエピアンドロステロン) dehydroepiamdrosterone
ー アンドロステンジオン androstenedione
ー アンドロスタンジオール androstenediol
ー アンドロステロン androsterone
A エストロゲン(女性ホルモン) estrogens
ー エストロン estrone
ー エストラジオール estradiol
ー エストリオール estriol
B プロゲスターゲン(黄体ホルモン) progestagens
ー プロゲステロン(天然) progesterone
ー プロゲスチン(合成) progestins
テストステロンの分泌と制御
おおまかに言うと、テストステロンやエストラジオール等の性ホルモンの分泌はHPG(視床下部・下垂体・性腺)軸によってコントロールされている。視床下部(hypothalamus)から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone GnRH)が下垂体前葉(anteriior pituitary)に作用し、下垂体前葉が性腺刺激ホルモン(gonadotropin Gn)を分泌。性腺刺激ホルモンには黄体形成ホルモン(luteinizing hormone LH)と卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone FSH)があり、その分泌や作用にはオス・メスで差が。基本的にオスの場合はLHが性腺(gonads 精巣)を刺激することにより性ホルモンが分泌され、FSHは生殖細胞の熟成(精子)や、下垂体前葉に作用しFSH自体の分泌を抑制するインヒビン(inhibin)の分泌を促進する。 メスの場合、FSHが間接的にエストロゲン分泌を促進、LHは卵子の成熟、排卵、そして間接的にプロゲステロン分泌を促す。
図は、非常に簡略化した、オスのテストステロン分泌とその制御メカニズム。副腎皮質からの分泌量は精巣からの量に比べると微量だが、メスでもテストステロンの分泌源(あと、卵巣からも微量分泌)。
テストステロンはGnRHや生殖腺刺激ホルモンの分泌を抑制するので(ネガティブ・フィードバック、血中濃度を一定範囲内に保つ仕組み=ホメオスタシスよね)、生得男性がテストステロンの使用を続けると、低精子症になったり、睾丸が萎縮したりするのはそのため。
第二次性徴後のFSH/LH分泌の男女差やら何やらは面白いけどここでは直接関係ないので省略。興味あるひとは下のサイト(英語)などをどうぞ。Wikipediaは包括的だけど予備知識が無いとヒジョーに分かり難いような気がする。
HPG Axis: Hormones of Male Reproduction -Education Portal
HPG Axis: Hormonal Control of the Ovarian Cycle -Education Portal
テストステロンの代謝
分泌されたテストステロンの5%程度は、5-α-還元酵素 5-α-reductase によってDHT(dihydrotestosterone ジヒドロテストステロン)となり、効力が普通のテストステロンの約5〜10倍強力になる(受容体との親和力がアップ)。5-α-リダクターゼは皮脂腺、肝臓、頭皮や外性器の皮膚などに存在し、T使用による体毛増加、頭皮脱毛、ミニチン肥大などは、DHTの働きによるもの。成人の人間の総(血清)テストステロン total(serum) testosteroneの標準値は文献によって結構バラバラで、以下は例:
オス:300 〜 1000 ng/dL(3 〜 10 ng/mL)
メス:20 〜 70 ng/dL(0.2 〜 0.7 ng/mL)
- 米国国立衛生研究所 MedlinePlus
オス:201 〜 705 ng/dL(2.01 〜 7.50 ng/mL)
- 日本人成人男子の総テストステロン,遊離テストステロンの基準値の設定、岩本晃明 他、2005
総テストステロンというのは、性ホルモン結合グロブリン=SHBG Sex Hormone Binding Globulin や、SHBGよりもTとの親和性の弱いアルブミンなどの蛋白質と結合している分子と、単独で血液中にフラフラしている分子(遊離テストステロン free testosterone)の合計で、年齢差がそれほど無いらしい。SHBGと結合しているテストステロンは受容体と反応しない一方、アルブミンとは結合が弱いので、遊離テストステロンと共にバイオアベイラブル(生物学的利用可能)テストステロン値 bioavailable testosterone に含まれる。
遊離テストステロン値 Free Testosteone も平均値や単位が検査によって違うみたいだけど、一例としては性別・年齢に合わせてそれぞれ以下の通り:
オス:50 〜 210 pg/mL (174 〜 729 pmol/L)
メス:1.0 〜 8.5 pg/mL (3.5 〜 29.5 pmol/L)
- WebMD.com
アルブミンとSHBGと総テストステロン値から遊離テストステロンを割り出すオンライン計算機:
Free & Bioavailable Testosterone calculator - International Society for the Study of Aging Male
但し、FTMのホルモン治療の管理として、この公式で出した値を一般男性の平均値と照らし合わせて良し悪しを判断して良いものかどうかは、今のところ不明。だけどまあ他に頼るデータも無いので、そうしてる医師が多い模様。
こんなのもあったので、参考までに ↓
ng/dL | |||||||
年齢 | 対象者数 | 総T | SD | 遊離T | SD | SHBG (nmol/L) |
SD |
25-34 | 45 | 617 | 170 | 12.3 | 2.8 | 35.5 | 8.8 |
35-44 | 22 | 668 | 212 | 10.3 | 1.2 | 40.1 | 7.9 |
45-54 | 23 | 606 | 213 | 9.1 | 2.2 | 44.6 | 8.2 |
55-64 | 43 | 562 | 195 | 8.3 | 2.1 | 45.5 | 8.8 |
65-74 | 47 | 524 | 197 | 6.9 | 2.3 | 48.7 | 14.2 |
75-84 | 48 | 471 | 169 | 6.0 | 2.3 | 51.0 | 22.7 |
85-100 | 21 | 376 | 134 | 5.4 | 2.3 | 65.9 | 22.8 |
健康な非糖尿病男性の血清総テストステロン値
Simon D. Nahoul K. Chades MA. Sex hormones, ageing, ethnicity and insulin sensitivity in men : an overview of the Telecom study. Androgens and the ageing male. Eds. Oddens B. Vermeulen A. Parthenon Publishing. New York. 1996
ng/dL | |||||||
年齢 | 対象者数 | 平均 | SD | 中央値 | 5%点 | 10%点 | 95%点 |
< 25 | 125 | 692 | 158 | 697 | 408 | 468 | 956 |
25-29 | 354 | 669 | 206 | 637 | 388 | 438 | 1005 |
30-34 | 330 | 621 | 194 | 597 | 348 | 388 | 975 |
35-39 | 212 | 597 | 189 | 567 | 329 | 388 | 975 |
40-44 | 148 | 597 | 198 | 597 | 319 | 378 | 936 |
45-49 | 154 | 546 | 163 | 527 | 329 | 358 | 846 |
50-54 | 164 | 544 | 187 | 518 | 289 | 348 | 936 |
55-59 | 155 | 552 | 174 | 547 | 319 | 338 | 866 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||