ORALETC.
TRANS* TESTOSTERONE 種類 経口・その他

天然 vs. 合成アンドロゲンの違い・用途など

製剤について/アメリカの製剤薬局

 経口テストステロン(oral)

そのままのテストステロンは飲んでも肝臓ですぐに代謝されてしまうので、錠剤のテストステロンには工夫が施されている。メチルテストステロンは肝臓を通ってもなかなか代謝されないようにテストステロンの分子構造を変えてあり(そのため長期使用での肝毒性が非常に高い)、アンドリオール(ウンデカン酸テストステロン)は親油性を高くして脂に溶かしたカプセルなので、小腸からリンパ腺に吸収され肝臓をバイパスするようになっている。

しかし、メチルは肝毒性、アンドリオールは使用の不便さと効果の低さから、基本的に経口テストステロンはFTMのトランジションには不向きのため、アンドリオールがごく一部で使用されているのみ。

ウンデカン酸テストステロン Testosterone undecanoate

化学式

C30H48O3

ブランドネーム

アンドリオール Andriol® (メルク) のほか、Androxon®、 Undestor®、 Restandol®、 Restinsol® などの名称で出回っている

概要

比較的新しく、特異なメカニズム。
ウンデカン酸テストステロンがオイルに溶けた状態でゼラチンのカプセルに入っている。エステル基(undecanoate)が長く親油性が高いので、食物脂質と共に小腸からリンパ腺に吸収され体内を循環する。そのため、肝毒性が低い。3ヶ月に1回筋注のNebido®も同じエステル。
アメリカ・日本では未認可。カナダやヨーロッパで使用されている。

使用量・頻度

40mgの錠剤を3〜4時間置きに1日3〜6錠脂肪分の高い食物とともに服用(360 〜 1,000mg/日)

一ヶ月当たりの費用

不明。

長所

メチルに比べて肝臓への負担が低い

短所

代謝が早いので、1日数回に分けた服用が必要。
吸収にムラがある。
DHT値が比較的高くなる。
胃に負担がかかる。
血中濃度を上げるのが難しく、男性化作用があまり見られない。生〇を止めるも難しいとのこと。

参考

Effects of testosterone undecanoate administered alone or in combination with letrozole or dutasteride in female to male transsexuals. Meriggiola M. C. et al.., J Sex Med. 2008 Oct;5(10):2442-53
要約のみ、被験者15人の極小規模な研究だけど一応:内摘済みFTMをTU(テストステロンウンデカン酸エステル)1,000mg/日、TU1,000mg+dutasteride(↓DHT)、TU1,000mg+letrozole(↓エストロゲン)の3グループに分けた54週間の治験。TUのみ&TU+D群では目立った副作用無くテストステロン値の調整には成功。TU+L群では骨密度が平均0.9g/cm2減少。TU+D群は筋肉量が増えず。
結論:@ TUはFTMのホルモン治療に有効、A エストロゲン骨代謝に重要、 B DHTは筋肉代謝に関連の可能性あり。


メチルテストステロンMethyltestosterone

ブランドネーム

エナルモン®(あすか)など、いろいろ

概要

最も古い経口テストステロンの一種で、経口剤としては最も一般的(舌下剤も多いらしい)。しかし長期に渡る服用では肝毒性が強いので、FTMのホルモン治療には使われていない(他の17-アルキルアンドロゲンも同様)。副作用にはSHBG(sex hormone binding globulin、性ホルモン結合蛋白)やHDL(high density lipoprotein、『善玉』)コレステロールの低下も見られるとか。構造上、還元されると強力なDHTに、芳香化されると強力なエストラジオール(女性ホルモン)になるため、いらぬ副作用も懸念される。男性化作用も低めのため、微量で女性のHRTに用いられているようである。安価で、ネット上でも良く販売されているが、トランジション用としては百害あって一利無しなので、避けるのが賢明。

参考

メチルテストステロン - おくすり110番

 経粘膜吸収型(sublingual / buccal)

経皮吸収型と同様、粘膜から直接血中に吸収される外用薬なので、肝臓や消化器官に負担がかからないのがウリ。ただ、いずれも一般的にFTMのトランジションには使われていない。

バッカル(口腔粘膜)剤buccal

ブランドネーム

Striant® (Auxilium)

概要

上唇の下の歯肉に付着させるタイプ。12時間ごとに貼り換える。Striant®は2003年にFDAが認可。使用量の調節が難しいのと、使用方法の不便さから、FTMにはあまり向いていない模様。


舌下剤sublingual

概要

舌の下で溶かし、粘膜から吸収させるタイプ。1日2〜3回に分けて摂取。製品としては出回ってないのかな・・・?製剤薬局では作ってくれるらしい。

 皮下ペレット(subcutaneous pellets)

これも一般的ではない方法。3〜4ヶ月に一度の簡単な手術を要する。それが楽なのか楽でないのかは考え様かな・・・。

皮下ペレットsubcutaneous testosterone pellets

ブランドネーム

Testopel® (Auxilium)

概要

  米粒大のテストステロン結晶を6〜12個、臀部や腹部の皮下にインプラントするもの(局所麻酔)。3〜4ヶ月毎に交換する。1日1〜3mgのテストステロンを放出するらしい。これも結晶自体は製剤可能。

 天然(Natural) vs. 合成(Synthetic)

一口にテストステロンと言っても『〇〇酸』だとか『メチル』だとかいろいろあって紛らわしいけど、要するにエステル基(尻尾みたいなもの)を付けるなどの方法でテストステロンの分子構造をちょっと改造して、吸収の速度や効果(アナボリックステロイドの場合は↑蛋白同化作用/↓男性化作用が理想)などを変えている、ということらしい。

一般的な医薬品として製造されているテストステロンの種類の違いについて、製薬会社Scheringのサイトに良い図解があったので、借用させていただきました。

FTMが主に使うのは、経皮吸収型(パッチ、ジェル)の天然Tと、非経口型(デポー剤)のエナント酸Tとシピオン酸T。天然のTは『素』の状態で、服用したりそのまま注射したりするといち早く肝臓で分解されてしまい、効果が期待できない。非経口型に付いているエステル基は親油性を高め(溶媒に使われる油によく溶け込む)、代謝を遅らせるので、注射されてから7〜10日間は効果が持続するようになっているらしい(但し、血中濃度は注射直後が一番高くなり、時間を追うごとに劇的に低下する)。経皮吸収型には天然型が使用され、皮膚を介して血液中に直接吸収(部位にもよるが使用量の約10%と言われている)される。効果は短いので毎日使用しなければならないが、その代わり血中濃度は注射よりも安定する。

因みにメステロロン(Proviron®)はDHTに似た化合物でアナボリックステロイドとして人気だけど、テストステロンに比べ蛋白同化効果が高く、男性化効果が低いらしい。フルオキシメスチロン(Halotestin®)はメチル同様、長期継続使用における肝毒性が強いらしい。

 製剤薬局 Compounding Pharmacies

イメージ写真(笑)薬局製剤は、メーカーが工場で作ったものじゃなく、認可されている薬局のラボで成分や溶媒を調節して作ってくれる薬。製剤なら個人のニーズに合わせて作られるので、既製品よりも融通が利く。例えば、テストステロンジェルは今のところ1%濃度のものしか市販してないから、それを使おうと思うと上腕と腹だけでは面積が足りないくらい大量に使わなきゃならないけど、管理人が使っている薬局製剤のジェルは濃度8%で、1回の塗布するジェルの量が8分の1で済む、という具合に。それに、薬局製剤だと広告料なども無いわけで、かなりお買い得。日本にも薬局製剤製造販売認可制度自体はあるものの、要処方箋薬は薬局製剤としての販売は許可されていないのか、テストステロン製剤は今のところ作ってくれない模様。

製剤出来るものは一般的に以下の通り:

アメリカでは大手のドラッグストアでは製剤はやってなくてWalgreens(大手薬局チェーン)なども製剤を始めたようだけど、多くは個人経営の薬局じゃないかな?以下は、アメリカ国内の製剤薬局の中でも、メールオーダーを受け付けていて、FTMがよく利用しているところ。国外からの注文には応じていません。

近所の製剤薬局サーチ:
FInd a Compounder - Professional Compounding Centers of America

最終更新日:2014年7月8日

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