SURGERYSTRATEGIES
目立つ傷痕の予防
手術にしろ怪我にしろ、皮膚にある程度深い/広い傷をつければ、痕は必ず残るもの。大抵の場合、時を追うごとに目立たなくなり、平らになるけど、時には盛り上がったり、色素沈着したりして肥厚性瘢痕やケロイドになることもあります。そういう傷を防ぐ・目立たなくすることはできるのだろうか?というページです。
そもそも目立った傷痕って、どーやって出来るんでしょう?調べた結果、どうやら主な原因は、
- コラーゲンの過剰増殖。コラーゲンは皮膚を形成する繊維みたいな細胞で、傷が出来ると生成されて傷を埋めるが、増殖しすぎて盛り上がることがある(肥厚性瘢痕、hypertropic scar)。
- メラニン色素沈着
- 免疫の過剰反応による皮膚組織の増殖(真性ケロイド、keloid)。傷口から細菌が入ることによる免疫反応。ケロイドにはなりやすい体質というものがあるらしい(黒人に多く、白人に少ない。アジア人はその中間)。
傷痕の出来方には遺伝による個人差があり、外的に出来ることは限られているものの、以下は基本的な心がけるべき点(手術痕に限らず、一般的な傷について)。
- 治癒の過程で、傷を清潔にして、カバーする。 理由は、
- 細菌の侵入を防いで、免疫の過剰反応(ケロイドを招く)を予防する。
- 湿潤環境を保ち、硬いカサブタができるのを防ぐ(新しい皮膚ができにくくなるから)。「皮膚に呼吸をさせるのだ」などと言って野晒し(?)にしてると、実際は治癒が長引かせ、目立つ傷痕の原因に。特に広範囲で皮膚が欠損しているような傷には大事。
- カバーで適度な圧力をかけておくと、傷が盛り上がりにくい。
- 使わないほうがいいのは、
- 過酸化水素入りの消毒薬。泡がブクブク立って効いてそうなんだけど、細菌のみならず新しく形成される皮膚も破壊してしまうらしい。まだ閉じていない傷を清潔にするのは重要だが、基本的に消毒薬は使わない方が治りは早いようである。
- ビタミンEやアスピリンなど、血液の凝固を妨げるものは、治癒を遅らせるので、傷が完全に塞がるまでは飲まないほうがいい。
- ビタミンEオイル。傷に塗ると良いと信じる人が多いが、実際には傷を目立たなくする効果は見られず、むしろ接触皮膚炎になる可能性が高く、逆効果であるという研究結果が。ただ保湿に優れているのは確かで「効いた」という人も多いので、個人の判断で。
- 傷痕を引っ張らないようにする。引っ張って刺激すると、コラーゲンの余分な増殖を促すので、傷が盛り上がってしまう危険性がある。胸の手術の場合は、両腕を挙げたり重いものを持ち上げたりすることは、手術後しばらくは避ける(筋トレは最低2ヶ月は控える)。
- 完全に治癒したら、傷痕をマッサージする(コラーゲンの塊をやわらかくする)。
- 禁煙。副流煙も避けること。喫煙は皮膚の血行を悪くし、治癒を遅らせるので目立つ傷が残りやすくなる。
- 日光に当てない。術後半年、できれば1年間は、傷跡をカバーするか日焼け止めを塗りましょう(特に手術後6週間はしっかりカバー。日焼け止めだけでは不十分)。
理由は、
- UVの刺激で傷跡にメラニン色素が沈着し、目立った傷痕になってしまう。
- UVは治癒を長引かせる。
- 腫れやかゆみが酷い場合には、医師に相談すること。炎症やコラーゲンの増殖を抑えるため、傷に直接コルチコステロイドを注射する方法もある。
- 手術痕は手術から6〜8週間目あたりが一番目立つ時期で、必ずしも傷が悪化してきたわけでは無いので、あまり焦らないこと。膿み、腫れ、痛み、発熱などがある場合には医師に相談。
- ケロイド(傷跡の縁を越えて巨大に盛り上がる傷)の兆候が見られる場合には、ステロイド注射や「リザベン」(トラニラスト)という抗アレルギー経口薬などの対処法があるので、なるべく早めに医師に相談しましょう。
詳しいことは下の参考ウェブサイトをご覧ください。
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