FTMCHESTSURGERY
TRANS* SURGERIES 乳房切除術 術式
FTM 胸部再形成術:代表的な術式
それぞれ短長あり、適応するタイプというのが大体決まっている。アメリカ人は肥満体 and/or Dカップ以上が多く、大多数は大きい傷が残る両側切開(乳輪移植)や逆T字切開になるが、日本人の場合、痩せ型で取るモノのボリュームも少なめの人が多いので、大多数が乳輪切開のいずれかを受けることになる模様。
ベルギーの外科医Dr. Monstreyらのチームは、
- 乳房の体積
- 余剰皮膚量
- 乳輪乳頭のサイズと位置
- 皮膚の伸縮性
の4点によって手術方法を決めるらしい(フローチャートの和訳)。とても分かりやすいので、以下同論文の図解を一部引用してリスト(下 I〜V の術式)します。術名はいずれもほぼ直訳なので(一応ググったけどなかなか見つからなんだ)、医学用語として間違ってたらゴメンナサイ。
- 乳輪下半周切開:Semicircular Incision
- 経乳輪切開:Transareolar Incision
- 同心円状切開:Concentric Circular Incision
- 延長同心円状切開:Extended Conentric Circular Incision
- 遊離乳首移植・両側切開:Double Incision w/ Free Nipple Graft
- 逆T字型切開:T-Anchor Incision
- その他の術式
- 脂肪吸引のみ
- 脇下切開
I. 乳輪下半周切開:Semicircular Incision
- 適応:Aカップ以下、下垂無し、皮膚に伸縮性があり、乳頭縮小不要
- 術式: 乳輪の下縁に沿って切開し、そこからハサミやメスなどを入れて組織を取り出す。医師によって、脂肪吸引を使う人と使わない人がいる。
- 術創:乳輪に沿っていてい、比較的目立たない。
- 長所:傷痕が目立たない。侵襲が少ない。乳首の感覚が戻る可能性が高い。
- 短所:同時の乳輪・乳頭サイズ調整、乳首の位置調整は不可能。
II. 経乳輪切開:Transareolar Incision
- 適応:Aカップ以下、下垂無し、皮膚に伸縮性があり、乳頭縮小希望。
- 術式:乳輪・乳頭を横断する切開をして、そこから乳腺や脂肪を摘出する。同時に乳頭を縮小(医師によっては同時に行わず、修正OP必須らしい)。ナグモクリニックなどで行われている模様。
- 術創:乳輪乳頭を横断する傷跡。色素が濃い乳輪内に収まるため比較的目立たないが治り方などによって個人差あり。
- 長所:傷痕が比較的目立たない。同時に乳頭縮小が可能。
- 短所:乳首の移動は不可能。同時の乳輪縮小は不可能。医師によっては乳頭縮小も同時に行わないらしく、その場合この切開で受けるメリットは個人の好みによるかも知れない。
III. 同心円状切開:Concentric Circular Incision
- 適応:皮膚に伸縮性のあるBカップ以下、又はAカップ以下でも皮膚の伸縮性がやや乏しい場合
- 術式: 乳輪周囲の皮膚をドーナツ状に切除し、組織を摘出して巾着縫合。乳首の周りに皺が寄った状態になるが、手術後数ヶ月〜1年で自然に収縮する(しない場合には修正手術)。
- 術創:乳輪外縁に沿っているため、比較的目立たないが、治り方などにより個人差あり。
- 長所:傷痕が比較的目立たない。乳首の感覚が戻る可能性が高い。乳輪サイズ・乳首の位置調整が多少は可能。
- 短所:同時の乳頭縮小は基本的に行われない。乳首の位置調整には限度がある。
IV. 延長同心円状切開:Extended Conentric Circular Incision
- 適応:皮膚に伸縮性のあるCカップ以下、又はAカップ以下でも皮膚の伸縮性がやや乏しい場合
- 術式:前項の同心円状切開に加え、各乳輪乳頭の側部から三角形に余剰皮膚を切除。
- 術創:乳輪外縁と各乳輪側部から並行に延びる傷跡のため、前項までの術式よりはやや大きい。
- 長所:両側切開よりも侵襲・傷が小さい。乳首の感覚が戻る可能性が高い。乳輪サイズ・乳首の位置調整が多少は可能。
- 短所:独特な術創(個人の好みの問題かと)。同時の乳頭縮小は基本的に行われない。乳首の位置調整には限度がある。
V. 遊離乳首移植・両側切開:Bilateral Incision w/ Free Nipple Graft
- 適応:Dカップ以上、或いはCカップ以下でも下垂が著しい場合。肥満&豊満が多いアメリカ人FTMの大多数はコレ。
- 術式:各乳房の下垂部を切除し、更に余分な脂肪、乳腺、皮膚等を切除。元の乳輪から新しい乳輪乳頭を作り、乳首は乳輪・乳頭を切り取って縮小し、新しい位置の皮膚をくりぬいた所に縫い付ける。
- 術創:左右に長い平行、またはU字状の傷跡。胸毛や大胸筋の発達によってあまり目立たない人もいる。
- 長所:1度の手術で平らな胸になる。手術する側としても切開が大きいため形成や組織切除が比較的容易で、乳輪乳頭の形成・配置も自在。
- 短所:大きい傷痕。移植のため、前項までの術式と比較した場合、壊死や乳首の感覚を失う可能性が高め。
特に著しい肥満体型の場合、脇の横に余分な皮膚が残る(「dog ears(犬の耳)」と呼ばれる)こともある(再手術で修正可能)。
VI. 逆T字型切開:T-Anchor Incision
- 適応:Dカップ以上、或いはCカップ以下でも下垂が著しい場合で、特に乳首移植を避けたい場合
- 術式:乳輪周囲の余剰皮膚を鍵穴状に切除し、乳腺や脂肪などの組織を除去、乳輪乳頭の位置を新しい位置に吊り上げて縫合。
一般女性の乳房縮小/吊り上げ手術(breast reduction、mastopexy)に用いられる方法の応用。
- 術創:乳輪外縁、各乳輪下部から垂直に逆T字型に延びる傷跡。
- 長所:乳首を血管や神経に繋いだまま移動するため、遊離乳首移植よりも壊死の危険性が低く、感覚が戻る可能性も高い。
- 短所:大きい傷痕。乳輪乳頭に繋がる血管等の組織を残すため、前項の乳首移植法よりも多少の膨らみが残る可能性がある。
)
VII. その他の術式
-
脂肪吸引のみ・liposuction
もう最初から殆ど胸が無い人は、金属製の細長いストローみたいなの(カニューレ)を差し込んで脂肪吸引(liposuction【lipo-(
脂肪) + -suction(吸引)】)するだけでOKな場合もあるらしい。この場合は切開の場所によって、脇下、臍、又は乳輪に小さい傷痕が残るのみ。乳首の位置は変えられない。また、皮膚の切除と併せて脂肪吸引を用る医師も。
- 脇下切開:
日本には、脇の下を5〜10cmほど切開して中身を取り出す、という術式をつかう医師もいるらしく、写真を見る限りではかなり自然な出来上がりになるみたいだね(このページの症例2
& 4参照)。相当小さめで下垂も無い人でないと難しそう。こちらも乳首の位置は変えられない。北米で同じ術式を行う医師は、今のところいないと思います。
最終更新日:2014年3月19日
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